医療診断や健康管理のために,人体内部を観察する様々な機器が使われています. X線を利用したレントゲン撮影やCT検査は鮮明な画像が得られますが, 放射線の被曝のおそれがあります. 一方,近赤外光を用いた拡散光トモグラフィなどの安全な機器もあり, 脳の血流の可視化などに利用されていますが,光が散乱してしまうために, 鮮明な可視化が難しいという問題がありました.
そこで,本研究では,安全性と鮮明さを両立した, 人体内部撮影システムの開発を目指します. 具体的には,人体内部撮影に適した近赤外光波長の計測系の開発と, 散乱光を取り扱う画像解析法の基盤技術の開発を目標とします.
X線を用いた撮影 拡散光トモグラフィ 提案課題 安全性 被曝の恐れ 安全 安全 鮮明さ 鮮明 不鮮明 鮮明
近年,特殊な光学系・CG技術・信号処理・数値計算・画像処理などの, 様々な分野の技術を統合することで, カメラ単体では撮影できない情報を可視化できる新しい撮影技術が盛んに研究され, カメラの撮影性能が飛躍的に向上しています. 本研究は,主に情報科学分野で研究されている撮影技術を医療分野に持ち込み, 新しい医療機器を開発しようという異分野融合技術であることが大きな特色です.
本プロジェクトでは,人体内部の可視化を最終目的とした コンピュータビジョンの基盤技術を開発します. カメラ単体では得られない視覚情報を獲得するために, 散乱光を除去したり, フォーカスの合う奥行きを自在に制御できる コンピュテーショナルフォトグラフィ技術を開発します. また,人体内部でどのように光が散乱するかを追跡するための 散乱光解析技術を開発します. さらに,これらの画像解析技術を人体撮影に適用するために, 近赤外の波長帯域で照明・観測できる計測システムを開発します.
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本研究で開発を目指すシステムは安全かつ小型であるため, 体温計や血圧計のように家庭でも簡単に利用できる簡易診断機器への応用が考えられます. このような機器は, 日常の健康状態の把握や疾患の早期発見のために利用できることから, 健康社会の実現が期待できます. また,医療分野だけではなく,指先の静脈の3次元分布に基づく個人認証技術など, セキュリティ分野への応用も期待されます.