第4章 テクスチャの生成

4.1 テクスチャの重み付き平均

マッピングするテクスチャとして,仮に正面向きの顔画像のみをテクスチャと して用いた場合,生成する顔の向きが正面向きから離れるに従って,テクスチャ のゆがみが大きくなる.これは,生成する顔の向きとマッピングするテクスチャ の向きが大きく異なると,それに応じてテクスチャの変形も大きくなるからで ある.しかし,生成する画像と顔の方向が似ている見え方を入力画像から選択 してテクスチャとして用いれば,テクスチャの変形が少ない分だけ,これらの ゆがみの問題が軽減でき,より自然な顔画像を生成することができる.

また,表情変化を持った顔画像を生成する場合にも同様のことが言える.さま ざまな表情を持った顔画像のテクスチャを生成するには,無表情の顔を無理に 変形するよりも,もともと表情を持ったテクスチャを用いる方が,より自然な 表情のテクスチャが得られる.例えば,表情によって生じる顔のしわなどは, 単に無表情のテクスチャを伸縮するだけでは再現できない.

本研究では,生成するテクスチャは複数の入力画像から得られるテクスチャの 重み付け平均を用いる.生成する画像と似た方向・表情の入力画像に対する重 みを大きく設定する.これにより,入力画像の持つテクスチャ情報を最大限に 活用できる.


4.2 重みの設定

特徴点の2次元座標がわかっているだけで,顔画像の撮影方向は未知であるが, 因子分解法[3]によって,大まかな撮影方向を推定できる.まず,顔画像から 鼻の頂点や眼の両端など表情にあまり依存しない数点の特徴点を選択する.入 力画像2枚(以上)とサンプル画像1枚の計3枚(以上)の画像上でのこれらの特 徴点座標を用いて因子分解法を行い,各画像の相対的な撮影方向を推定する (因子分解法によって撮影方向と同時に大まかな3次元形状も推定できるが, 用いる画像には複数の表情が含まれる場合や,異なる人物の顔画像が含まれる 場合があり,必ずしも安定ではない.そのため,推定された3次元形状は利用 せず,撮影方向のみを利用している).各入力画像に対する重みは,生成した い画像の顔の方向との角度差の2乗に反比例するように設定する.

また,表情に関する重みについては,式(12)の係数b_jと同じ比率とし,総和 が1になるように正規化する.特徴点座標と同時にテクスチャも内挿するとい う点では,原理的にモーフィングと同じである.


4.3 2次元のテクスチャマッピング

テクスチャマッピングは,特徴点を頂点とする三角形パッチごとに行う.各パッ チごとに複数の入力画像から三角形領域内のテクスチャを切り出し,生成する 画像での特徴点座標に従ってアフィン変換を行い,重み付け平均をとった後, マッピングする.但し,特徴点は2次元であるため,パッチ間の前後関係はわ からない.そのため,各三角形パッチの頂点の記述順から表裏の判定を行い, 裏向きのパッチにはテクスチャを描画しない.人間の頭部のような凸多面体に 近い形状では,この程度の表裏判定だけで実用上十分である.
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